志の輔落語

 今回は抽選はずれてなんとかチケット確保したよ。新作と古典それぞれ一席ずつ。「花子」はオチがうまくひっくり返ったなという感じだったけど、あれをしつこく繰り返して話を引っ張られるのは私的にはちょっとという感じだった。でも、志の輔という人は誰も気づかないような細かいところに目をつけて笑いをとるのがうまい人で、今回もマクラでそんなところに目をつけるのかと爆笑したのだが、何の話だったか思い出せない。
 で、「帯久」、この噺はじめてだったのだが面白かった。前座に「寄合酒」をやらせたのはうまいというか、この噺のマクラとして一種の伏線を張ることになってるんじゃないかと思う。ただ、師匠の噺ではなく、噺の構造自体に限界を感じた。思うに、途中で「ここで終わったら嫌でしょ」って客席に振るんだけど、本人的にもあの噺あそこで半ば終わっていると感じてるんじゃないだろうか?与兵衛の描写は十分、あとは帯屋がというところで大岡越前が出てきて、帯屋はただの悪人だったということになってしまうのには不満が残る。これだと大岡越前はちょっとしたデウスエクスマキーナだよな。でも、平然と人に残酷な振る舞いができる人間をどう描写するかってのがやっぱり一つの見せ場になって欲しいというか、人間の業にこだわる醍醐味でしょ。それに、あれだと何でこんな店にあんなできた番頭がいるのか不思議になってしまう。