ザ・ローリングストーンズ

 作業がはかどならいので、結局、今夜も映画館に足を運んでいる。ロックフェスの時期にあわせてということなのだろうか(でも、客は年長者ばかり、フェスに行かないような人が来るのでしょうか)、『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』、これ、でかいスクリーンで見てみたかったんだよね。
 ロック映画の傑作というと、まず、スコセッシの『ラスト・ワルツ』ということになり*1、それを否定するつもりはないのだが、かなり前の記憶で語らせてもらうと、ロビー・ロバートソンをはじめとするメンバーたちの自分語りを演奏の合間に挿入してるのがちょっとうざいんだよね。見てる方としては、どんどん音楽にのっていきたいわけじゃない。
 スコセッシは『シャイン・ア・ライト』のときも、カット割りが細かくて、それぞれのショットはいいとこ撮ってると思いつつも、こんなに切り換えられたら、音楽に集中できないよって感じてしまうところがあった(繰り返してみると印象が変わるかもしれないが)*2。ただし、『ノー・ディレクション・ホーム』については、見つけてきた映像と関係者の証言がすごすぎて何もいうことがありません*3。サントラは愛聴盤です*4
 ジム・ジャームッシュは、『ラスト・ワルツ』のフォーマットを逆手にとって、ニール・ヤングの『イヤー・オブ・ザ・ホース』を撮ってみせた*5。こちらは、同じフォーマットが流れては止まり流れては止まりというリズムを生み出して、それがたまらなく気持ちよいものになってる。ニール・ヤングの親父(息子と風貌が似てるのよ)まで呼び出して語らせるインタビュー・シーンは、語りを聞かせる以上に、ニール・ヤングを初めとするメンバーの風貌の変化を見せるために効果的に利用されている。これが最後の曲(だったと思う)『ライク・ア・ハリケーン』のシーンに効いてくる。
 ハル・アシュビーも、明らかに『ラスト・ワルツ』を意識しており、あえてインタビューの類は排し、のりのあるロック映画として音楽を聞かせるように撮っているんだと思う。たしか、米国では、当時、映画館のシートの前の方をとっぱらって踊れるようにして公開したんじゃなかったかな。
 「A列車で行こう」をマクラにはじまる一曲目「アンダー・マイ・サム」でまずやられてしまう。オリジナル・テイクより絶対にこっちの方がかっこいい。「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」も。「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」という、時を経たストーンズにとっては複雑な含意を持ってしまう、曲に重ねて昔の映像の類が入る。そのもたーっとしたアレンジに、渋谷陽一は当時のストーンズをもっともよくあらわしているナンバーだとコメントしていたような気がする。それから、ライブ中もっともノリがよい曲だと思う「ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー」には早廻ししたセットの設営風景があてられ、その小気味よい感じがまたこのカバー曲とマッチする(この曲は当時シングル・カットされたはず)。後半はヒット曲オンパレードになるのだが、ステージ的な最大の見せ場は「ホンキー・トンク・ウーマン」ではないかと。で、ジミヘンの「星条旗」でしめる。
 しかし、メンバー若い、って当時すでに40前後だったわけですが、キースかっこいい、チャーリーしぶい。イアン・スチュアートとイアン・マクレガンがピアノ、キーボードをやってますな。しかし、ビル・ワイマンはなんで一人60年代のポップ・ショーのステージ衣装みたいな服着て、心ここにあらずみたいな感じで弾いてるんだろう。
 当時、期待された来日は、結局、かなわなかったわけだが、見るんならこのとき見たかったな。おそらくストーンズが現在進行形のバンドだったのはこのあたりまでだったんじゃないだろうか。そして、このツアーがスタジアムロック時代の幕開けだったということになるのかな。
 

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