若者と初期キャリア

毎年、この時期は若年労働問題の本を何か読んで少しは知識を増やしておかなければならない。今年はわりと最近になった出ていることに気づいたこれにした。新しいデータも加えてこれまでの知見がまとめられているのは便利。また、経団連等がフリーターの正規採用にあたって、その能力を問題にしていたわけだが、フリーターの能力形成の問題も扱われている。
この点だけにしぼって、まず需要サイドからみていくと、これは学歴と学習への動機付けが相関するという話になると思うのだが、この事態はどう解釈すべきでしょうね。苅谷本や山田本の延長にある話とみるべきなのか。

学歴別の実施率の違いに注目すると、「勤務先が実施した訓練」については、正社員と「その他非典型」の場合、学歴が高いほど受講者比率は高い。パート・アルバイトで場合も学歴が高いほど受講者比率は高い傾向があるが、全般に低水準である。これに対して、自己啓発についてはパート・アルバイトの場合も含めて、大学・大学院卒の実施率が特に高い。すなわち、高等教育を卒業した者は、雇用形態に関わりなく、卒業後も自発的に学ぶ者が多いという結果である(165頁)。

他方、供給サイドをみていくとこんな感じ。しかし、能力開発と言ってもいろいろあるからなー。

非正社員の能力開発を実施している事業所は、正社員の能力開発もよく行っている事業所で、従業員の非正社員率が高く、かつ非正社員離職率が高いことがわかった。また、こうした能力開発を実施している事業所の方が、実施していない事業所より、「人材を育成してもすぐ辞めてしまう」ということを問題点として認識している割合が高いことも明らかになった(216頁)。

とはいえ、「非正社員比率については、能力開発を行う事業所のほうが高い場合(飲食店、金融保険)と差がない場合(小売、食品製造)があり、また離職率についても、一概に能力開発を行っている企業の方が非正社員離職率が高いとはいえないことがわかる」(182-3頁)。いずれにせよ、

「店長」や「販売、接客、調理」の職種ではアルバイト等から正社員登用が活発に行われているようだった。正社員登用ではまず、どの職種でも意欲を問うことが多いが、これに加えて、シフト勤務や全行への対応、リーダーシップが問われていた。
 これに対して、「営業」分野はむしろ中途採用と一体化して、当初契約社員で雇用してこれを見極めの期間とし、その後正社員に登用していく方法が多い。「事務」系は、女性を中心に登用が行われており、業務の知識や技能の水準を確認しての登用が行われている(220頁)。

という結果は、非正社員の能力開発に積極的なのは非正社員と正社員に求められる能力にあまり大きな差のない職種が多いと言ってもいいんじゃないだろうか?需要サイドの話も重ねると、ここには極めて大きな問題が横たわっているように思われるのだが。
 

若者と初期キャリア―「非典型」からの出発のために

若者と初期キャリア―「非典型」からの出発のために

 

昨年度の労働力調査(詳細集計)の結果はこちらで

http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/pdf/index1.pdf