トスカーナの贋作

 キアロスタミの新作。講演者がいない講演者席に、講演者が遅れてあらわれオリジナルとコピーというありがちな話を始め、その講演者と一緒に出かける機会をもった女の車には前方の風景が映り込み、前作『10夜』を思わせるようなところもありつつ話が進み、カフェを出た辺りから、英語の会話がいきなりフランス語に切り替わり、二人はあたかも夫婦のようにふるまいはじめるのだが、あまりにその流れがスムーズなので、夫婦を演じているのか、本当に夫婦なのか時々わからなくなる一方、そのなかで女は明らかにその一線を越えようとし、男はそれを拒絶しようとしている。しかも、夫婦を演じているというのに、この二人その年頃の夫婦らしく喧嘩ばかりしてるんだよね。レストランでは英語とフランス語のやり取りに変わってさらにその食い違いがあらわになり(ワインを飲んでパンが出てくる)、その後は---。ヨーロッパで撮ってもキアロスタミキアロスタミというか、この会話を見せていくのがスゴイ。もう一回見に行く時間を作ることはできるかな。