『天下統一と朝鮮侵略』

 織豊政権の政策が一向一揆に対峙するかたちで形成されてきた。それが、知行地や農民の掌握と市場町人の再編成であり、楽市楽座や検地、刀狩りが行われていく(下克上の凍結)。そして、こうした分国支配を強行することは、結果的に諸大名の民衆への支配力が強くなるということでもあって。この中央集権の強化から帰結する地方分権の強化という矛盾、この矛盾を克服しようする流れのなかで大陸侵略が行われていくと。誰が天下をとるかという話よりも、どうやってすべてを天下に据えていくかという記述の方がずっと面白い。元本は、名著の呼び声が高い網野善彦『蒙古襲来』*1と同じ小学館の日本の歴史シリーズの一冊。

天下統一と朝鮮侵略 (講談社学術文庫)

天下統一と朝鮮侵略 (講談社学術文庫)

*1:

蒙古襲来―転換する社会 (小学館文庫)

蒙古襲来―転換する社会 (小学館文庫)