こんな本文庫化していたんですね。で、一仕事したから、たまにはこっち系の本を読んでもよいだろうと。いわゆる「先代萩」、すなわち伊達騒動以降、幕府は「主君押込」を公認していると。で、それにあわせて進行していたのだが、家臣団の大名の家への統合である。その過程でお家騒動が起こったりするわけだが、この統合過程は単純に家臣たちが主君に従属していく過程ではなかった。
即ち領域内統治に関わる行政的諸局面において、また家臣の知行の取り扱いや生活規制、倹約政策といった諸政策の遂行の場において、家老・重臣以下の家臣各層の身分序列に応じて、その政治的権力、発言権、決定力などが比例的に配分されており、それが永続的に再生産されていくことを意味している。
このように政治的な意志決定が身分階層秩序に拘束されていた訳であるが、それは次の二つのことを示すことになる。第一に、その決定力の最も大なるものは、この身分階層序列の最上位にある大名主君その人に他ならないということ。しかし第二として、決定は主君一個によってなされるのではなく、右の身分序列に応じた決定力の配分の中で行われるものだということである(232頁)。
となると、領主と農民に類比される関係が、領主と主君の間にも成立していったと考えてよいのかな。
彼らの存在理由は、領主であるという先天的な自明性にあるのではなく、行政的役人という国家的・社会的に有用な職務の遂行者という側面に求められるのである。従って、その行為・活動の基準は、国家レベルでの公共的有効性の観点に求められる。---。ここからして、右の公共的理念に背反する悪玉・暴君の廃立が、必然的に導き出されることになる(292頁)。
- 作者: 笠谷和比古
- 出版社/メーカー: 講談社
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