『出会い』

「ゲームの面白さ」

 冒頭で、相互行為(焦点の定まった集まり)と社会集団の区別がひとくさり述べられているが、一番のメルクは「関与」にあると考えられているといってよい。
「それらの特性でもっとも決定的なものは、自発的関与という有機体的な心理生物学的資質であるように思われる」。「個人が一つの活動に携わると、それが他人と一緒にやる活動であってもそうでなくても、その活動の虜になり、われを忘れ、のめり込む、というように、いわば自発的にそれに関与してしまうことがある」(29頁)。「共同活動のなかに自発的に関与することによって、個人はその状況の構成部分と成り、その状況のなかに定着してそしてそれに対して自分をさらすことになる」(29頁)。
 で、相互行為の外側にあるものもその関連性をめぐって相互行為の内側から境界が引かれ、持ち込まれるにしても一定の変形を受けて相互行為の内側から定位されるという話。
「あらゆる出会いはその出会いのなかで完全に具現化できる世界の一部である出来事を維持している。そのことと同様に関心や注目を受けない事柄の多くのものも当該の出会いのタイプの境界の外部にある組織的な基盤とそれに関連した意味の世界を持っている」(18頁)。「しかし、実際上は、外部に具現化されている事柄は、ほとんどの出会いにおいてある種の公式の位置と重きが与えられ、その場で公認された要素としてあらわれる」(19頁)。
 でも、それとは別に相互行為の膜をかいくぐってくるものもあるという話なのだが、これと前の話って必ずしも記述のオーダーが一致しないと思うんだけどな―。この辺は精神分析の影響とか受けてるのかな。
「その場より大きな世界が持ち込まれなければならない。しかしそれはまた統制され偽装された方法で行われなければならない」(76頁)。「外部に関連した感情がその相互行為に流入することを制御する膜が維持されなければならないのである」(66頁)。「個人の感情のうえに被せられるベールの種類を決めるのは、個人自身だということである」(74頁)。
 で、まとめ

対面的相互行為において状況の定義を相互に維持する過程は、関連および無関連のルールによって社会的に組織される。没入することを管理するこれらのルールは社会生活では実質的でない要素、すなわち、丁寧さ、作法、礼儀というような事柄であるように見える。しかし、われわれがリアリティをしっかりと実感することができるのは、外部の世界の揺るぎない正確によっているのではなく、まさにこれらのもろいルールによっているのである(80頁)。

役割距離

 こちらは、基本的には「自己の同時的多元性」という話の展開なわけですな。これは『公共的な場所でのふるまい』につながる。

「そこで、要約として、状況に埋め込まれたシステムが準拠点として与えられるならば、役割距離は、役割の規範的ではなく典型的な側面であると言ってよい。しかし、状況に埋め込まれた役割を扱うときに個人に軽さが強要されるのは、多元的な状況に埋め込まれている社会的実体に対する個人の重層的な愛着とコミットメントという重みがあるからである。状況に埋め込まれた役割を軽蔑するのは、他の同一化の基礎を尊重した結果なのである。
 状況に埋め込まれた役割からこうしたより広い実体に準拠点を移すとき、役割距離は再び規範的な枠組みに対する反応として見ることができる(142/126頁)。

 で、役割距離の問題が、状況に埋め込まれた活動システムにかぎらず、社会集団にも適用可能であるという結論が引き出されて、いわば『アサイラム』でやったことと正反対のことがなされてきたことになる。

状況に埋め込まれた活動システムのなかにある個人の状況に埋め込まれた役割から出発して、伝統的に役割分析が扱ってたきた領域にすすむには、その状況に埋め込まれた役割が、社会施設や職業システム、公式組織中の個人の役割の特徴(であり反映)にほかならず、状況に埋め込まれた活動システムはそのもとで制度的舞台設定を確保していると想定すればよい(145/163頁)。

出会い―相互行為の社会学 (ゴッフマンの社会学 2)

出会い―相互行為の社会学 (ゴッフマンの社会学 2)

Encounters: Two Studies in the Sociology of Interaction

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Encounters (University Books)

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Encounters: Two Studies in the Sociology of Interaction

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