エリアス『定着者と部外者』

 この夏いろいろと本を読んできて考えてみたい問題があったわけだが、ずっとある種の物足りなさがあって、その点について、さしあたりもっとも明晰な解釈を呈示しているのは、とあるコミュニティを取材したエリアスの研究になるとは思わなかった。これでいくと、差別の中心にあるのは人種等々ではなく、集団間の権力関係であり、統合力のある確固とした規範を持った集団が、それを欠き自らを脅かしかねない集団を支配するにあたって、むしり人種等々が引き合いにされてくるということになる。とても面白い。やはり、エリアスは一通り読んでおかなければまずいな。

成員たちが一世代以上にもわたってお互いを知っていた昔からの住人や家族は、自分たち自身の間に共通の生活様式、一連の規範を確立していた。かれらはいくつかの基準を守り、それを誇りにしていた。それゆえ、かれらの近隣への新来者の流入はかれらによって、新来者が同胞の国民であるとはいえ、確立された生活様式への脅威として経験された。ウィンストン・パーヴァの古い地区の中心的集団にとってかれら自身の名声意識、および帰属意識はかれらの共同生活とその伝統に結びついていた。かれらが高い価値があると思っていたものを保持する為に、かれらは新来者に対して地位を閉ざし、かくして自分たちの集団としてのアイデンティティを守り、その優越性を主張した。その状況はおなじみである。それは非常に明瞭に、定着者が自らに帰する人間的価値ー集団カリスマーと定着者が部外者に帰する「悪い」特徴ー集団的汚名ーの相補性を示している。後者ーかれらは古い住人に対してだけでなく、お互いにとってもまた新来者、見知らぬ人であるー結合力を欠いているので、かれらは自分たちの自信の地位を閉ざし、反撃することができないのである(10頁)。

定着者と部外者―コミュニティの社会学 (叢書・ウニベルシタス)

定着者と部外者―コミュニティの社会学 (叢書・ウニベルシタス)