『ホモ・サケル』

 前の話のコロラリーだと言ってよいと思うが、われわれが法規範が存在するというとき、法規範はその実際の適用の如何にかかわらず存在しているわけだが、それはどのような意味においてかといえば、主権が潜勢力として存在するということである。そして「存在する潜勢力とはまさしく、現勢力に移行しないことができるというこの潜勢力のことである」。「この潜勢力は、自らが宙吊りにされてあるという形式で現勢力との関係を維持するのであり、現勢力を実現することができるということで現勢力でありえ、主権的なしかたで、それ自体が非潜勢力でありうる」(70頁)。「まさに存在しないこともできるということによって現勢力との関係を維持するという潜勢力の構造に、自らの適用を外すことで例外に自らを適用するという主権的締め出しの構造が対応する」(71頁)。

ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生

ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生