『ホモ・サケル』

 こいつはそうそう調子よく読めないよ。訳文も固いし。とりあえず、主権の逆説のところ。
 主権による例外化は、法的規範が効力をもつ可能性条件である。「「主権者は、法的秩序の内と外に同時にある」(25頁)。「実定法の効力が例外状態において宙吊りになるからこそ、例外状態は通常の事例を例外状態自体の効力の領域として定義できる」(28頁)。「法は法的でないもの(たとえば自然状態としての純粋な暴力)を、法が例外状態において潜勢的な関連をもつものとして自らを維持することを可能にするものとして前提にする。主権による例外化(自然と法権利の代打の不分明地帯としての)とは、法的参照を宙吊りにするという形で法的参照を前提にすることである」(33頁)。
 法規範はそれを満たしているものとそれに反するものを区別し、法規範が効力をもつ領域のうちに法規範に反するものをも組み込まなければならないが、こうした操作そのものは当の規範にとって例外をなす。

混沌はまず、外部と内部、混沌と通常状況のあいだの不分明地帯の創造によって、つまり例外状況の創造にによって、秩序の内に包含されなければならない。実のところ、何かを参照するには、規範は関係の外にあるもの(無関係なもの)を前提しなければならないが、にもかかわらず、そうすることでその無関係なものとの関係を定めなければならない。例外関係はこのように、法的関係の原初的な形式的な構造を単純なしかたで表現している。例外に関する主権的な決定はこの意味で、原初的な政治的-法的構造であり、そこから発してはじめて、秩序の内に包含されているものと秩序から排除されているものとがそれぞれの意味を獲得する。したがって例外状態は、原型においては、あらゆる法的な局所化の原則である。というのは、例外状態だけが、これこれの秩序の固定、これこれの領土規定の固定がはじめて可能になる空間を開くからである。しかし、例外状態はそれ自体としては、本質的に局所化されえない(特定の時間や空間に関する諸限界がそのつど割り当てられることはあるとしても)(31頁)。

 例外に関して主権の「決定がかかわるのは、法権利と事実のあいだの関係そのものである」。「法権利が規範的な性格をもち、「規範」であるのは、それが命令し指令するからではない。それが何よりもまず、現実の生の内に法権利自体の参照の枠を創り出し、現実の生を規格化すべきものだからである」(41頁)。「主権とは、法権利が生を参照し、法権利自体を宙吊りにすることによって生を法権利に包含する場としての、原初的な構造のことである」(44頁)。

ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生

ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生