ベーム=バーヴェルク『マルクス体系の終結』

 今年はマルクスがらみで、いつもとは違う方面の本を読んでみた。ということで、みてみたのはベーム=バーヴェルクの『資本論』批判。議論がよく整理されていておさらいに便利だった。で、ベーム=バーヴェルクによれば、『資本論』の第1巻と第3巻のあいだには矛盾があると、つまり、マルクス剰余価値理論と均等な平均利潤率が形成されるという議論のあいだには整合性がない。
 まずは、よく知られた「必要労働時間」と「剰余労働時間」の区別。

マルクスによれば、剰余価値とは、資本家が、一日のうちの一部分、じぶんのために、労働者をはたらかせ、これにたいして労働者に支払わない、ということの結果である(41頁)。

 で、剰余価値率は、必要労働時間にたいする剰余労働時間の比率から決まり、不変資本は価値の生産に貢献しない。しかし、利潤率については、可変資本と不変資本の割合を考える必要がある。可変資本部分にたいして不変資本部分が小さければ小さいほど利潤率はそれだけ高くなる。
 次に、生産部門ごとに資本の有機的構成(可変資本/不変資本)が相異なるために、利潤率も相異なってくるのであるが、競争によって多様な利潤率は、一般的利潤率へ均等化されるという話(51頁)

ここからでてくる重要な帰結は、個々の資本家の手に入れる利潤が、かれじしんによってやとわれた労働からだけ生じるのでは、けっしてなく、しばしば大部分、そしてまた時に例えば商人資本のばあいのようにぜんぶが、当該資本家とまったく無関係な労働者たちに起因する、ということである(53頁)。

 この批判について、その後どんな議論がなされたんでしょうな。暇をみて調べるべきでしょうが、とりあえず当面は見送り*1

マルクス体系の終結

マルクス体系の終結

 
(追記)簡単な読み物としては、さしあたりこれ。http://diamond.jp/articles/-/3921

*1:転形論争につながるのですね。http://ja.wikipedia.org/wiki/転形問題