この1週間ほどエリック・ロメールの追悼上映が行われており、全部で10本ほどかかっていた。ヌーヴェル・ヴァーグの云々って言われてたから、学生の頃、機会があればロメール作品を見るようにしていたのだが、水着のお姉ちゃんが出てきた以上の記憶があまり残っていない。せっかくなので、この機会に見直してみようというわけで---。といっても、 当然のことながら、全てを見る時間など作れるはずもない。とりあえず、「美しき結婚」を見てみたら、面白いことこのうえない。で、(あとあとしんどいことになるとはうすうす分かったうえで)時間のあるかぎり見に行った。
ロメールを論じれば、きっとその光が云々とかいうような話になるのだと思う。実際「レネットとミラベル」や「緑の光線」でとらえられている一瞬なんてやっぱり注視してしまうし、このカットきれいだなと見とれてしまうところも多い。でも、そんなところまで話をもっていかなくても、等身大の女の子たちを描いたラブ・ストーリーそのものが面白い。
女の子といっても、主人公およびその周辺の人物は、たいてい20代前半で、年齢的には女の子とは言わないんじゃなかろうかと思うのだが、その姿を見てるとやっぱり「女の子」って感じで見てしまう。また、字幕も「女の子」と表記されていた。
一本、一本論じているときりがないので大雑把にくくってしまうと、出てくる女の子たちの多くは多かれ少なかれ思い込みが激しい。だから、その分だけ幼稚に感じられて、それで「女の子」と言いたくなるわけだが、上映された作品が80年代から90年代にかけて撮られたものであることを考えれば、それがいかにも等身大の「女の子」たちの姿なのだろうと感じさせる。で、その思い込みの激しさがどんな結末を招きますかそれぞれお楽しみというところなのだが、その過程でやりとりされある女の子たちの恋愛や恋人の話も面白い。
他方、「夏物語」では男の子が主人公になるのだが、変なこだわりのある女の子たちもどこか滑稽というか愛嬌があるのだけれど、それと比べても男の子ってバカだなと思ってしまう。恋愛がらみでは、女の子に比べて男の方が圧倒的に現実から置いて行かれているというのは、日本でもこの研究あたりで指摘されていることなのだけど*1、まあ、どこの国も似たようなものということなのだろうか?
かくいう私自身、以前、見たときの記憶があまり残っていないぐらいだから、そういう女の子たちの気持ちの動きについていけない未熟者だったのでしょうね。それを面白いと思えるいま、少しは自分も進歩していると受け取ってよいのだろうか?まあ、仮にそうだとしても遅すぎるというか、年齢がいきすぎてますな。
それから、余計なことを一つ。「レネットとミラベル」で、レネットが男性に道を尋ねて教えてもらっていたら、もう一人別の男性が現れてその道よりこっち道の方が早いと話しかけてきて、道を尋ねたレネットそっちのけで、二人で口論を始めるシーンがあった。これ、多分、監督あるいはその周辺の人たちが実際に目撃しているか経験している出来事なんだろうね。いかにもフランス人らしいと思った。この作品は、この手の小話満載。
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*1: 増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在 (ちくま文庫)