ダントレーヴ『政治思想への中世の貢献』

 やりすぎと思いつつ、もう少しアリストテレスおよび自然法の関連で聖トマスについて知りたかったので、この本を読む。

政治的諸制度はしたがって、聖トマスによれば、「自然的」道徳性の一側面ないし一部である。そうしたものとして、それらは、宗教的価値からは独立した、純粋に人間的地平において考えられ、正当化されうるのであり、この宗教的価値といえども、国家がそれの必然的な表現である自然的秩序を改変することはできないのである」(44頁)。

 これは、アリストテレスを受けつぎながら、現実にある人間の権威と服従の関係を肯定するものにもなっている(55頁)。他方、

政治的経験をうちに含み、これを十分に正当化する自然的秩序は、ちょうど自然法が神の永遠法の一部にすぎないように、聖トマスにとっては、より高次の秩序の存在のための一条件、一手段にすぎない(43頁).

 法の強制力も君主の権威に由来するとされるが、それは君主の意志が法的効力を持つのは、それが理性によって規律せられたものだからである(62頁)。
 ダントレーヴは面白い。他の本も読んでみたい一方で、かなり古い研究だからその後はどんな展開があったのか気になるが*1、一応この話もここまでで禁欲。

政治思想への中世の貢献 (1979年)

政治思想への中世の貢献 (1979年)

*1:これとか読みたい。

マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統

マキァヴェリアン・モーメント―フィレンツェの政治思想と大西洋圏の共和主義の伝統