ミルク

 ガス・ヴァン・ザントの新作。映画としては前二作に比べるとふつうの映画で、作品的には前二作の方がよかったと思う。でも、ショーン・ペンの演説をする姿(だけではないが)は悪くない。いまハーヴェイ・ミルクの映画を見ると、東海岸からサン・フランシスコに流れてきて、ゲイの解放区を作って、同性愛者を越えたマイノリティの連帯を作って市政委員になっていくその姿は、明らかにオバマのそれにつながる。ボクが学生時代に彼のことを知るきっかけになったドキュメンタリー映画ハーヴェイ・ミルク」もスコレで再映されるらしい。あらためて見てみようかな。
(追記)
 見てきた。関係者のインタビューで構成されているので、ミルクの言動がマイノリティのあいだに連帯を打ち立てていった様子がよくわかる。また、『ミルク』では言及されていない、暗殺後の不公正な裁判とそれに伴って生じた暴動についてもふれられている。そのなかで、彼の同志であったレズビアンが、同性愛者から市民権を奪おうとした提案6号に対して、同性愛者のあいだに恐怖があったのと同じように、法案を支持する側にも恐怖があったのだということに気づいたと述べているところ。判決後の怒りに満ちた暴動にたいして、ミルクが暴力に反対だったことを思い返してこうしたやり方は間違っていると考えをあらためたと述べていたところが印象的。恐怖を背景に暴力が発動する。こうした恐怖を解除していくために、彼が頼ったのは言葉の力だったのだ。しかし、学生時代どこでこの映画を見たかは覚えているのに、内容の方はあまり覚えていないというのはどうしたわけだろう。