演劇の歴史

 いくつか比較的入手しやすいものを読んでみたけれど、図鑑みたいな本だからと敬遠していたこれが、とっかかりとしては一番包括的でよいかもしれない。しかし、これも絶版。18cの市民劇の考え方をレッシングのそれから。

一つは、事件よりも登場人物(キャラクター)に、作品の演劇的興味がおかれなければならない。ドイツ語の〈カラクター〉も、英語の場合と同様、ある一つの役を生かす人物の性格を意味している。個人の中でその人間性を本質的に、かつ典型的に決定するものはこの〈カラクター〉でり、したがって人物がおかれている社会的環境は二義的なものであった。
次に、対話をできるだけ自然なものにしなければならないという考え方である。この場合〈自然な〉ということは、下層階級の粗野で無学な言葉使いはむろんのこと、形式ばったわざとらしさや、抑制のない無自覚な情熱の爆発を避け、節度在る調子で語ることである(81)。
レッシングが指摘した最後の点は、粗野でもなく上品ぶったものでもない節度ある調子が、真の市民的たんせいさのあらわれでるということである(82)。

演劇の歴史 (上・下) (1977年)

演劇の歴史 (上・下) (1977年)

西欧演劇史のお勉強は一応これで打ち止め。