ルネサンスの劇場

 次のブツが手許に届くつなぎにと思って読みはじめたのだが、いろいろあってその間に読み終えられず、でも一応と思って読了。分厚い本で話が細かくてついていくのがしんどい一方で、いささか訳文が読みにくい。オンデマンドで再刊されてるようですな。この本の読者層ってどんな人たちなんだろう?
 近代演劇はルネサンスに始まると言われるわけだが、その起源について解明を図った本。「ルネサンス演劇の起源を、中世の宗教的演劇の行列的形式よりは、絵画、彫刻、タブロー・ヴィヴァンにまで跡づける」という主旨(46)。基本的には、プロセニアム・アーチがどうやって確立したかという話になるわけだが、これは要するに、それ自体意味を担っていた舞台の縁取りが、次第に単なる枠に化していく過程であるとまとめてもよいであろう。

ルネサンスの真の達成を示したもの、その後の演劇のすべてのために形式とコンヴェンションとのパターンを設定したもの、中世の行列の物語的な時間芸術に変わるものとして、絵画的空間における組織化を確立したものは、背景であった(44)。

ローマが陥落し、キリスト教徒が演劇を古来の劇場建築から放逐した後には、人々が見たものは、ただ最も原始的なタイプの演劇的行列のみであった。しかしながら、美術家は、ギリシア演劇において発達した背景の要素のあるものを保持して、それらを、後の美術家に、最後には後の演劇へと伝達したのである(46)

 で、縁取られた舞台の内側は、次第に、幻想でありながらリアルなものとして受け取られていくようになると。

近代演劇は、既に画家によって描かれていた歴史上の支配者、ロマンティックな物語、寓意的な空想を、生きた俳優によって見たり聞いたりしたいという欲求から、現在の人物や出来事を、演劇的な再演を通じて、歴史の魅力とアレゴリーとの承認を与えることによって強化したいという願望から生まれたのである(321)。

ルネサンス劇場の誕生―演劇の図像学 (晶文社オンデマンド選書)

ルネサンス劇場の誕生―演劇の図像学 (晶文社オンデマンド選書)