相変わらず安丸先生の本を読んでいます。やっと1冊読み終わったと思ったら、2冊目はすらっといきましたな。
これって徳と利のヴァリエーションでしょう?とかいった部分を読みながら、藤田省三の「安楽への全体主義」って話を思い出した*1。
民衆意識の次元からすれば、敗戦とは日本帝国の崩壊であるよりは、その生活における戦時の異常な悲惨の終焉と常態への復帰を意味し、戦後民主主義とは、旧い公的タテマエから分離した民衆のエゴイズムが、普遍的な人権として公認されることを意味していた(214頁)。
政治不信と価値ニヒリズムは、私たちの生活そのものの体質なのである。だから、「期待される人間像」や「明治百年」祭や靖国神社問題等々において、国民の同義の頽廃を政府当局者が嘆いてみせるほど、本末転倒のはなはなしいものはない。現代の日本社会に同義の頽廃があるとすれば、それは、彼らが推進した戦後日本の経済と政治の運動原理そのものがもたらしたものなのである(237頁)。
人間的なものの表出が社会のカラクリによって遮断され、こうした欺瞞が公然かつ支配的なものとなった社会において、その社会の空気を呼吸する人間の精神が健全でありうるはずがない。そしてまた、このような頽廃の対極に、人間のどのような言葉をも信ずることのできない拒絶者たちが出現することも、必然である(238頁)ただし、手許にあるのは朝日選書版日本ナショナリズムの前夜―国家・民衆・宗教 (洋泉社MC新書)
- 作者: 安丸良夫
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こちらは丸山眞男の超国家主義の話等が、15年戦争の経験を範型にして明治以降の近代日本を語ってしまいがちだという批判。
わたしのばあいは、---、天皇制というものを例外状況というか危機状況というか、そうものとの関連で考えようとしたところが重要だと思います。現在から見てみると、ほとんど狂信的で馬鹿げたように見えるものが、なぜある特定の時代の人々の心を動かしたのかというと、それはつまり危機的な状況の中で、人びとが世界の全体はどういうものかということを問わざるをえない立場に追い込まれ、いわば幻想の側から現実をのりこえようとするからでしょう。現代社会は、非常に通俗化・世俗化された社会ですから、そうした社会の目から見たばあいには、大変奇妙で馬鹿げたものが、べつの社会では思いがけなく大きな力を発揮するということがあると思うのです(217頁)
- 作者: 安丸良夫
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なんてことを書かれるとこれも読まなきゃならなくなるじゃないか。
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