立川談春大独演会@大阪フェス

 また行っちまった。今年これで何度目かねー。それも大阪くんだりまで。暴挙とも言われる、今年でなくなってしまう大阪フェスティヴァル・ホールへのお別れもかねてって、これが2度目のフェスなのだけれど(そして、どうせなら、翌々日からの山下達郎もみていきたかったのだが---)。一番上の方の800円の席ですよ。ネタは「夢金」と予告されていた「芝浜」。片っぽは目を覚ましたのが実は夢のなかでしたって噺で、もう片っぽは夢だ夢だって言われたことが実際に起こったことでしたって取り合わせ。今年はすごく久々にそれも随分と落語会に行ったけど、季節おりおりの噺が聞けるってのは、風情があっていいもんだ。日常生活のなかで季節を感じる余裕なんてなかなかないからね。「芝浜」を聞いて年の瀬を迎えられるなんてサイコーでしょー。師匠のそれとはまた違った演出がなされていて、それもまたよかった*1
 実際に起こったことを夢だと言われて真に受けるお人好しもお人好しだが、これは夢だと思わなきゃやってられない現実ってあるよね。でも、そのこと自体がとても苦しいことだったりする。カミさんは実際に四十二両の金の入った財布を拾ったのは夢だが、それをあてにして飲み食いして借金を増やしたのは現実だと告げる。それを真に受けた男は、自分がこしらえた苦境を見ないふりをして、いわば夢だったことにして、カミさんにおしつけ、ただひたすら働く。ここにはある種の等価交換がある。そして、それが小さな幸せを生む。だから、最初の嘘は「夢」のまま忘れることができる。40才そこそこなのに、コイツほんとにうめェーよ。

*1:談志の「芝浜」はお正月にやってましたね。