ヴィルヘルム・ハンマースホイ

 人づてにいいよと聞いていたので、上京したついでにホントにすべりこみで見てきた。たしかに、これは行く価値があった。まずは、人はもちろん、家具すらおかれていない部屋を描きながら、その描かれた空間に惹きつけられというのがなんとも不思議。その絵にかぎらず、見ていくと、どの絵も静謐間が漂い、たとえ肖像画でもどこか無機的で、なんとも不思議な気分を味わうことになる。うなじに焦点があわせられたイーダの後ろ姿なんて、くたびれて生気が感じられない一方で、そこはかとない色気を感じてしまう。しばしば写真をベースにして描かれているらしいその絵は、一見、すると素朴に写実的なようでいながら、複数の視点を組み合わせていたり、不思議なところに扉があったり、椅子の脚があるのかどうかよくわからなかったり、影の調子が不自然だったりする。そのなかでは、特に、なんでこんなところに扉があるのって感じで、扉がにゅっと出てくる扉に妙な存在感のある絵のその扉がとても気になった。で、改めて他の絵も見直してみると、どれも奇妙な存在感をたたえているんだよな。オススメですが、ボクが行ったのが最終日、それも閉館間際だったのでした。
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