佐藤道夫『検事調書の余白』

 佐藤道夫といっても、どれくらいの人が覚えているだろうか?たしか、二院クラブ比例区に出て当選し、その後、民主党に移ったはずだ(もう引退したけれど)。当時、なんで青島幸男はこんな人を引っ張ってきたんだろうと思ったが、その後、たまたま国会で彼が質問する場面をテレビで目にして、さすが検事あがり、鋭いところをついていくなと思ったのを覚えている。そんな彼が書いた本をたまたま見つけたので読んでみた。ますます青島が声をかけた理由が分かったような気がした。是非はともかくとして、裁判員制度も導入されることだし、読んでおくのに悪くない本だと思うけれど、まだ入手できるのだろうか?

法律学者は、やたらと難解な議論をする。一方、法律実務家は、判例がどうの、学説がどうのと言って、なかなか素直に説明しようとしない。それに騙されて、法律は難しいと考えてはいけない。「常識」がすべてと思っていい。常識上どうしてもおかしいとしか思えないことを説く専門家がいるとすれば、その専門家は、まがいものである。
 トラブルに巻きこまれた場合も、恐れるには当たらない。素直に事実を見て、常識に照らして判断すればいい。ところが、この世の中、常識通りにいかない人たちがあまりにも多い。かくして、法律専門家と称する人たちの出番がくる。そうあってほしくないという思いを込めて、このエッセーを書き連ねてきた(312頁)。

検事調書の余白 (朝日文庫)

検事調書の余白 (朝日文庫)

と書いてから、何年たっただろう。佐藤氏の「そうあってほしくないという思い」を身をもって知らされることになった。法律も法律専門家も必ずしも常識どおりにいかないようになっている現実は確かにある。