桜井徳太郎『結衆の原点』

 『思想の冒険』所収の論文と同タイトルの本が出ていたので、入手して読んでみた。部落の平準化の機能について秘密、つきあい、神事と祭事、講といった項目を取り上げて検討を加えた本。でも、一番、気になったのはやはり、平準化の機能が差別と裏腹だという点だろう。

だから世間並みの生き方に執着し、それを最善の尺度とみる村落では、そこから逸脱する行動や生き方に対してマイナスの評価を与える。また伝統を重視した保守的傾向が強いために、そういう生活態度の世代的継承とその持続を通じてパターン化した生き方の規準が定着してくる。共同体の集団的意思をこの規準へ集中し固着化しようとする方向が見られる。そういう社会構成体では規準を超えて傑出するものの足を引っ張り、逆に脱落しかかったものを引き上げようとこころみる。つまり平準化の原理がはたらいて、そこからはみ出た両極を捨象する平均化の作用が明白化している(73頁)

結衆の原点―共同体の崩壊と再生

結衆の原点―共同体の崩壊と再生