神島二郎『近代日本の精神構造』

 神島二郎は、自然村に相当する〈第一のムラ〉と〈第二のムラ〉を区別する。〈第二のムラビト〉とは、〈第一のムラ〉の秩序意識を身につけた、学校出身者や出郷者のことであり、彼らが〈第二のムラ〉を作る。

このような自然村的秩序が、〈第二のムラビト〉によって社会に持ちこまれるとき、それは、かつて藩校・塾・組に見られたようなそれぞれの特徴を文武官僚・企業・組合の組織のなかにそれぞれ対応して定着させ、同時にまた、これが支配層・中間層・被支配層の性格をも規定する要素をなした(30-1頁)。

 彼らは農村という経済的基盤を失ったため不安定な立場に置かれており、その秩序意識は精神主義的な方向に抽象化されており、それが日本的ファシズムの温床になった。

天皇制権力の強さは、その正当化の基礎を国民大化する自然村秩序感覚の分散過程に置き、これによって経済的不安をクッションすることであり、その弱さは、そのゆえにかえって経済的不安を根本的に解決できず、いたずらにこれに駆られて対外積極化することにある(37頁)。 

 というわけで、ここに色川とよく似た問題設定を見いだすことができる。

近代日本の精神構造

近代日本の精神構造