大塚久雄『共同体の基礎理論』

 前述の「思想の冒険」グループあたりが論敵としていたであろう大塚の議論をおさらい。封建的な生産様式が崩壊し資本主義的な生産様式に移行にするにあたっては、「共同体」の崩壊が伴う。共同体には「土地の共同占取と労働用具の私的占取」という「固有の二元性」があり(37頁)、この「内的矛盾」の展開が共同体を崩壊に導く発展段階を構成する。というわけで、有名な(それとも悪名高い?)「アジア的形態」→「古典古代的形態」→「ゲルマン的形態」という発展段階が出てくる。この過程で、分業の発展に伴い血縁的な規制は後退し、土地の私的占取の拡大は共同体が保証する「実質的平等」を「形式的平等」に転化させる。でも、移行のメカニズムそのものはよくわからない。こうした段階論を批判し、共同体から近代へのつながりを構想しようとするとき、れいのヴェラ・ザスーリチへの手紙が引き合いにされてきたりするわけですな*1

共同体の基礎理論 (岩波現代文庫―学術)

共同体の基礎理論 (岩波現代文庫―学術)

共同体の経済構造―マルクス『資本制生産に先行する諸形態』の研究序説

共同体の経済構造―マルクス『資本制生産に先行する諸形態』の研究序説

*1:たとえば、ホブズボームのこの本の58-9頁に出てくるようなマルクス。「かれは、原始共同体を、いかに後れたけいたいであろうとも、積極的な社会価値をそのうちに具現しているものであるとつねに称賛していた」(58頁)。