『「水俣」の言説と表象』

 もう手遅れになりそうな仕事の一貫としてやっと読了。当時の新聞記事やテレビ番組をなぞって描き出される事柄は、知らない知見も多く、興味深く読めた。とくに、これだけ漁民暴動に注目したものはこれまで読んだことがない。でも、なんだか違和感も残る。「水俣病事件が、なぜ、あのような報道のされ方をしたのか」という問いが出発点にあるというのだが、言説分析的なアプローチを意識しながら、ここで確認されていく一連の知見は、どうもこの問いにはなじまないように感じられてくる。だって、素朴に考えても、一定の言説を引き起こす原因は他の言説に限られるのかといえば、そんなことはないだろうと思うのだが---。

「水俣」の言説と表象

「水俣」の言説と表象