よくわからないタスポ

 ボクはタバコは吸わないからどうでもいいといえばいいのだが、未成年者の喫煙防止と称して、タスポという登録制で写真入りの成人識別カードを発行して、このカードがなければ自販機でタバコを買えなくするのだという。東海地区では6月から実施とのこと(12月4日付『朝日』夕刊)。ボクは、たまたまちょっと前にこの話を聞いていたのだが、何をいきなりという感じじゃないだろうか?なんでこんなことができるんだろう?記事をみると、「成人識別は、日本たばこ協会、全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会が自主ルールとして取り組んでいる」とある。つまり、業界団体が自主的に始めたのだから問題がないというわけ。でも、JT抜きだよ。こんな営業妨害みたいなこと、なんでJT抜きでできるんだろう?
 まず、タスポのHPはとぐぐってみた。http://www.taspo.jp/index.html
このHP、よく分からないのだ。というのもタスポのことは分かっても、導入の経緯等については一切説明がない。新聞記事にあった三つの団体が運営主体なのだとあって、簡単に紹介されているだけ。いつどこで決まったのだろう?下の方に小さくTABACCO INSTITUTE OF JAPANのコピーライトと記されていたので、このTABACCO INSTITUTE OF JAPANをぐぐってみたら、それは「社団法人日本たばこ協会」のことで、こちらからならタスポへのリンクもはってあった。たばこ事業の広告や販促に関する自主規準を設けるという活動内容をみてなるほど、タスポを仕切っているのはココ。記事の最初に名前が出てきた団体だ。ここには経緯も記されており、2001年11月12日に三つの団体で導入を発表し、2008年の全国導入を決めているらしい*1
 協会概要を見ると、JTはここでかかわってくることが分かる。フィリップ・モリスなんかといっしょに役員を派遣してるよ。さらに、協会の事業概要をみるだけでこの団体が財務省と関連が深いこともわかる。タスポ以外はむしろ財務省から要請を受けていろいろやってるみたいですね。あるいは、これなんか見ても、この話、実質的には財務省の肝いりにしか見えない。三つの団体から(やらせっぽい)依頼があって財務省が行政指導をするって、これのどこが自主ルールなわけ?
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/tabakoa/tabakoa190328_h.pdf
これ以上は面倒だから調べないけど、まず確認しておくと、財務省JT筆頭株主であり、タバコ事業を管轄している。つまり、JTおよび日本たばこ協会はもちろん、JTとつながりの深い他の二つの協会も、財務省天下り先である公算が大きい(私より熱心な方、それぞれの役員と元役人をつきあわせてみてください)。だから、財務省の意向を反映させるのはきわめて容易。
 となれば、このカードの導入は実質的には財務省の主導、そして財務省天下り先を始めとする利権と結びついているとみてよさそう。なによりも、利用者の要望にこたえたとのことだが、タスポにはJCB日本たばこ協会が組んだプリペイド電子マネーピデル」がチャージできるようになっている。きっとやりたいのはこれだよね。調べればまだでてくるかも。いずれにせよ、実質的には、国民を広範に拘束する政策レベルの決定なのに(たばこはパチンコと違って税金とってるんだよ)、内閣や国会の審議を経ることなく決められているといっていいだろう。
 でも、これでどれだけ防止効果があるんだろう?自販機用のカードに写真を貼っても意味がないし、それにきっとタスポで買って未成年者にタバコを売るヤツが出てくるよ(その場合、購入履歴のデータは警察にまわるの?)。もっとたちが悪くなるんじゃないかな。そもそも未成年者の喫煙を防止するなら自販機でのタバコ販売をやめればよい。未成年の飲酒・喫煙を違法としながら、いたるところに誰にでも買える自販機が設置されていること自体が奇妙なのだ。でも、それじゃあ売り上げが減りそうだからできないよね(カードを導入するだけでも売り上げが減るから、喫煙年齢を18歳に下げるという噂もあるときいたけどホントかな?)。
 それから、未成年者の喫煙がホントに問題だと思うなら、販売制限する以上に、大人がしっかり叱らなきゃならないんじゃないかな。昔は、未成年者は隠れてこそこそタバコを吸ったものだが、いまじゃ制服来て人前で堂々とタバコを吸ってたりするよ。でも、子どもをまともに叱れないそんな大人を問題にする声なんてちっとも聞こえてこない。
 それに使い道は未成年者の喫煙防止だけかな?たとえば、(自販機だけだと効果があがらないとかいって)さらに店頭販売でもカードの提示を求めれば、これで個々人の喫煙情報はしっかり記録できるようになってしまうわけだ。そこで、思い浮かぶのは健康増進法。生命保険の加入料なんかと連動させるといった話だって将来的には考えられないわけじゃない*2。将来的ということじゃあ、タバコ同様にこんなことができるのはお酒だよね。お酒に同じことが適用されたら嫌だな。
 でも、これ、もっと前から分かってた話だよね。何を今頃?それに、ボクがネットでちょっと調べてみただけでもこの程度のことはすぐに分かるのだから、もっと取り上げようがあるはず。マスコミって天下り嫌いのくせして、この手の具体的な利権がらみの話になるとちっとも問題にしないのはどういうわけなのよ。

*1:でも、興味深いことには、未成年の喫煙者がどれくらいいるかはデータがないらしい。http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=640

*2:まあ、そのためにはホントはこんな本がもっと読まれるような状況を作り出す必要があるんでしょうけど。

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