やっと届いた『貧困襲来』。『生きさせろ』のところでもちょっと書いたけれど、どうもわれわれの少なからずは生活保護の意義をよく知らない。さらに、安倍元首相のかかげた「再チャレンジ政策」や母子家庭やホームレスに向けた「自立支援」が、生活保護を受けさせないための施策でもあることもわかっていない*1。
そして、生活保護が後退したところで、その埋め合わせに動員されるのがヴォランティア、ひいては「貧困ビジネス」だ。とりわけ、この「貧困ビジネス」の話は強烈だった。公的扶助が後退した後、代わりにセーフティネットの役割を果たしているのが、この「貧困ビジネス」だというのだ*2。
「貧困ビジネス」?ボクはその話を読みながら、伊勢崎町商店街の一本裏に入った通りにある不動産屋の張り紙を思い出した。「外国人女性の方。仕事あります」(さすがに指導が入ったのかしばらくたったら、その張り紙は無くなっていたけれど)。きっと、部屋を貸すのと仕事を紹介するのが抱き合わせ。それで、仲介料とかいって給料がピンハネされたり、部屋を借りる諸経費の前借り分が引かれたりしたんじゃないだろうか?
「貧困ビジネス」もそんな感じで貧困状態にある人につけこむ。余裕がないから、いくら条件が悪くても、仕事を受けるにしても、部屋を借りるにしても、それを受けるしかない。で、使えなくなったらさようなら。さらには、そうした自分を「駄目なヤツ」だと甘受する。この余裕のなさを湯浅さんは「溜め」と呼ぶ*3。
"溜め"がないからこそ、劣悪な条件とわかっていても「貧困ビジネス」に手を出さざるをえない。そして「貧困ビジネス」は〈貧困〉を固定化するから、日雇い派遣で働く人はお金を貯められず、アパートに入るときも、とにかく安いところに入るしかないし、お金がなくなれば消費者金融に手を出さなければ生きていけない(159頁)。
なんかため息がでます。
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*1:以前、こんな話を紹介しました。http://d.hatena.ne.jp/Talpidae/20070409/p1
*2:こんな本が出てるそうな。 ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)
*3:この"溜め"のなさっていわゆる「適応的選好形成」に近いといってよさそう