えっ、それってトランス状態?

 アリオン音楽財団が主催する〈東京の夏〉音楽祭というのをご存じだろうか*1?どう説明すればよいのかよくわからないが、とにかく興味をそそられる企画がいろいろあって、毎年上京する用事にあわせて一つ二つのぞいてみることにしている。去年は、ユッスー・ンドゥールを、一昨年は、シュトックハウゼンとドゴン族の仮面舞踏(これはすごかった)を見ている。今年も上京にあわせて、<カリブの島>ハイチ、ヴードゥー儀礼音楽に行ってみることにした。
 祭壇が設けられ、4人(男、黒人二人、白人二人)のパーカッションにあわせて、男一人、女四人の歌や踊りが入るという趣向。最初はわりと軽い気分で聞いていたのだが、よくわらかないまま一人の女性が倒れてかがみ込んだ。あれ、どうもトランス状態に入ったみたい。トランス状態に入るのを見るなんてもちろん初めてだ。一気に聞いているこっちのテンションまで高まってくる。
 次の楽曲でも同じように二人の女性が立て続けに、軽いけいれんを起こして倒れ込んだ。そしたら、今度は白い布をまきつけている。周りの人はトランスに入りかけていることが分かるようで、周囲に体を支えるようにして立ち、安全に横になれるようにしている模様。
 次と次の楽曲では、男性と女性がそれぞれトランス状態に入って、今度は儀式まで執り行う。明らかに目つきからして変わっていて、客席からも人をあがらせてお浄めみたいなことをしている。これって自分がトランスに入って儀式を行うことが期待されているわけで、その状況でトランスに入って、しかも、儀式まで執り行うってどういうことになっているのだろう?でも、終わるとぐたっとして汗をかきひどくしんどそうだ。
 トランスに入るのは一度きりかと思っていたら、男性はもう一度別の楽曲でトランス状態に入る。このパフォーマンスではこれまでと違ってスーツにめがねをかけてトランスに入って死体みたいになる。そんな感じで、こちらは、舞台上で生起していることを注視しながら、体はパーカッションに音に浸っている。終わると日常のわずらわしさを忘れられてすごくすっきりした気分。いやこんな体験できるなんて凄い。今年も行ってみてよかった。ホントは19日の<タンザニアの島>ザンジバル島の大衆音楽「ターラブ」も聞いてみたいのだが、まあ、これは仕方がないか。