アーサー・フォーゲル〜ショービズ界の帝王〜

 80年代はしばしばスタジアム・ロックの時代と位置づけられる。で、ときどきお世話になるけど、本来、ドームのコンサートは好きじゃない。たいてい音が悪いし、ミュージシャンも豆粒のようで、その代わりにいろいろショーアップしたセットを楽しむことになる。けど、私は音楽、場合によってはそのパフォーマンスを見たいのであって、それ以上の見世物はどうでもいい。とはいえ、そうしたビジネス・モデルを完成させたのがこの人物だったんだということになるのだな。ふつうのドキュメンタリーだけど、それがよく分かったのは面白かった。
 まあ、こういうスタイルに先鞭をつけたのはストーンズなんだろうけど、話はそのストーンズをビル・グレアムから奪うことから始まる。で、初来日を果たすわけですな。最初はたしか白い旗を回してただけのU2が派手なステージをやるようになるために手助けを必要としたのも彼だ。たた、その分、ボクにはU2の魅力が薄れている。
 CDがきてダウンロードが来てCDが売れなくなり、もう一度ライブで稼ぐようになる。たしかに、最近のいわゆる大物アーチストのチケット代は高い。というわけで、ライヴでもうける新しいビジネスモデルができてきている。といっても、そうしたツアーを組むのはもっぱら大物ミュージシャンであり、70年代にだってアルバムは売れなくても観客動員力の高いビーチボーイズグレイトフル・デッドがいたわけだから、根本的な発想はそれほど新しくない。ボノはアートと言ったけど、やっぱりただのエンターテインメントに思えるな。別にそれが悪いというわけではない。ただ、私の趣味ではないというだけのことだ。
 そんななかで面白かったのはレディ・ガガの存在だ。最初に彼女が出てきたときは際物だと思ったけど、そのうち、好き嫌いはともかく、とても自分のやることに自覚的なミュージシャンだということが分かってきた。そして、その彼女はアーサー・フォーゲルに目をつけられること狙っていたのだという。実際、彼女の言うとおり、デジタル時代になってスタジアムを一杯にできるミュージシャンは彼女くらい?映画のなかでもいまのレコード会社が若手のミュージシャンを育てようとしないという話がでていた。どこも似たようなものなんですな。
 ちなみに、紹介されたライブのなかで私が見ていたのは、決して再結成はないと思っていたポリスのライブだけだった。解散の事情は知ってたからね。でも、思いの他よかった。