アンブロークン

 監督がアンジェエリーナ・ジョリーで、日本軍の描写で話題にされなければ、多分、見なかっただろう作品。そんなに日本軍の描写、おかしいですかね。気になるとすれば、捕虜を移動するときの風景が、これ日本じゃないだろとか、収容施設や工場が、まあ、美的にはきれいだなと思うんですけど、ホントにこんなのだったのんかいな。敗戦直前の日本であんなところに鉄パイプ使う余裕あったのかとか、そういうことが気になりました。まあ、それは主題とは関係ないんでしょうけど。
 そして、主題的にはこういう映画は好きじゃないというか面白くない。不条理な仕打ちを受けながらも最終的にそれに打ち勝つという筋立てが。イタリア移民でなめた苦痛、オリンピック選手として有望視されていたのに戦争でその機会を奪われ(日本でも冷戦でその機会を奪われた人がいましたが)、戦時に海上を一ヶ月くらいさまよった上で、日本軍の捕虜となり、しかも、所長にさらに虐待される(ここにホモセクシャルなものを読み込むこともできるかもしれませんが)。でも、最後はそれをすべて克服し、すべてを許すに至ると。要するに、キリストになぞらえることができそうなヒーローなんですね。すごい方なんだと思いますし、感銘も受けますが、自分の人生とはあまり関係なさそうです。
 強い人を見せられてもただの感動の物語なんですよね。でも、たいていの人間は弱い。それを受け入れないと、世の中成立しないというか、みんな弱さを抱えて生きていかなければならない。達人の話なんてどうでもいい。この映画では、収容施設の所長が同じようなトラウマを抱えて、それに打ち勝てたなかった弱い人物として、主人公の鏡像のように描かれています。実際、冒頭の方のシーンで神父に神は光と闇を作ったといわせてるんですね。むしろ、こっちの方が興味深いというか、でも、これでもまだありきたりな感じがする。弱い人間はどう生きればいいんですかね。そして、弱さに貫かれ動物化した人間を前にして強くなれない弱い人間はどうすればいいんですかね。もちろん、単一の答えなどないでしょう。でも、映画の主題にされるべきはむしろそっちじゃないかな。