ニューカマーの子どもと移民コミュニティ

 これもとてもきれいに整理した分かりやすい本だった。この手の議論をする際には参照されるべき本になるのだろうと思う。ただ、とりあげているサンプルが何を代表しているのかということについては大いに議論の余地があるのではないかと思う。おおざっぱに言えば、移民ネットワークと移民コミュニティの関係が主題的にとりあげられている本なのだけれど、対象としてしぼりこまれるのは男性日本人と女性フィリピン人の夫婦の子で(もちろん、逆のカップルもありえます)、母方の来日の由来が芸能関係と家政婦関係に分けられるなかで(前者の方が多そうな気がするのだが)後者にあたる、1,5世と日比国際児に分けられる子どもたちについてフィールドワークをした成果をもとにしたものである。ちなみに、わたしも何人か「フィリピン人ハーフ」を知っているのだが、いずれもここに該当しない。
 水商売方と家事労働者方では後者の方が親族ネットワークが働きやすい。後者の方が市場にさらされていない。ネットワークを作るうえで有効なのは教会である。教会は母親のニーズに応えるように組織されやすい。だが、必ずしも子どもにとってはそうではない。というのも、学校という場が大きな力が持つからであり、その一方、学校を考慮したうえでユースグループが組織される。このユースグループは親のニーズを満たさないかもしれないが、ルーツの確認には役に立っている。(続く)