砂の敷かれた舞台の上に照明で前後に境界が引かれているらしく、その奥の明るい部分が室内ということのようだ。この室内に人が集ってきて、幼児を床に寝かせるもっとも、それは人間というよりは人形あるいは死体のようだ。最初3人だった室内に後から二人が加わり、5人になるが4人はそれぞれてんでんばらばらの方を向いてゆっくり歩んでいる。
その室内の外側に二人の男がやってきて、部屋に入って知らせようか知らせまいかとやりとりをはじめる。ひとりは裸足。ひとりは年配。姉が死んだということなのだが、最初はなんのことだかわからない。死んでいるのは幼児のように見えるからだ。どうも、室内にいる5人のうち二人は妹でその姉が死んだということのようなのだが、どうしてすぐに教えないのかよくわからない。不幸があったというのならすぐさま知らせるのはあたりまえじゃ?
しかも、この二人が語る室内の様子は、室内の様子を反映しているようでもあり、反映していないようでもある。この二人が語る室内の様子と私(たち)に見える室内の様子が時として、そうなのかと思えたり、明らかに食い違っていたりするのだ。いったい、この二人は何者で、いったい何を見ているのだろう?
最初は姉の死を知らせにきた隣人の類いに思えたのだが、そのうちこれって死神でもおかしくないと思えてくる。一人はこの家族のことを知っていて、もう一人は知らないらしい。とにかく、のろのろ歩き、間延びした仕方でしゃべり。年老いた方の身内と覚える人物がやってきて、また室内にかかわることを語る。
そんなやりとりが続き、「迎えの人物」がやってくる。歩んでは下がり歩んでは下がり。この迎えの人物は死体を担ぐのか、それとも冥界へのお迎えなのか。彼らと室外の人物たちでやりとりがある。
で、知り合いでもあるという年配の人物が室内に入ってことの次第を告げる。さて、この人物は室内に入る前と入った後で同一の人物なのだろうか。言い換えるなら、室内の外で同定されるこの男は、室内で同定されるこの男と同一の人物なのだろうか?いずれにせよ、室内にいた4人はいっせいに室内の外にかけだす。そして、また部屋に戻ってくる。そして、幼児をやはり死体のように抱き上げる。その後、はじめて、この子が人間であったことがわかる。それまで、人形なのか人間なのかよくわからなかった。微妙に足が動いたような気がしたのだが。いちばんの演技はこの子だったのかも知れない。