サンドラの週末

 タルデンヌ兄弟の新作はある意味では下手なストーリー。一人の同僚を解雇するのと1000ユーロのボーナスをもらうのはどっちがよいか。解雇されると死活問題になる女性は旦那の支えを受けつつ、同僚にボーナスを諦めてくれと説得してまわる。これが、どんなに惨めで、精神的に消耗するものか。いずれにせよ、この展開は日本ではありえないようなフランスらしい(?)すごく直裁的な場面が続く。同僚たちは様々な生活状況で暮らしており、その人種も多様だ。ここには自己責任なんて話は出て来ない。お互いどちらの責任でもないことが分かってうえで、どうやったところで後味の悪い選択をしなければならないのだ。この結果、彼女が得るものはなんなのか?仕事に関する結末はなんとなく想像が付きそうだ。それも大切なのは何よりも正義だ。彼女は正義という視点を獲得し、あらためて自らの人間としての尊厳を確認し、強い一歩を踏み出すことになるのである。