ピケティ「21世紀の資本」を読む

 を読んでみたけれど、冒頭のピケティのインタビューを読み、ピケティ自身がその批判は正しいと言ったクルーグマンの書評を読んだ後は正直嫌になった。クルーグマンのここまで丁寧な紹介と内在的な批判はこの書物を彼がどれほど評価しているかの証であろう。しかし、その後の議論はほとんど外在的な批判であり、なかにはピケティの議論でアベノミクスはおしまいだという噴飯ものの話まで掲載されている。外在的な話自体はそれはそれでよい。しかし、その前にピケティの議論を踏まえるといまの日本について何が言えるのだろう?たとえば、キャピタル・ゲインの課税率は低いよ。相続関係の緩さは知ってのとおり。また、株式運用を意識して、1億円以上の所得税については累進課税率がゆるくなっている。それに、たとえば、カルロス・ゴーンが得ている給与は一億円をはるかに超えているよ。そして、ピケティは経営者の高額報酬に対して累進課税で対応をと言っているのだ。つまり、いまの日本の状況とつきあわせて考えられることがある。しかし、そんなこと執筆者の誰も問題にしていない。ひどい本だと言ってよいと思う。