狭山事件の真実

 冤罪説から話を組み立てているのでちょっと議論がゆるいなと思うところもあるが、現在、狭山事件の概要を知るためにもっとも入手しやすい本はこれかな。警察の取り調べのずさんさがよく分かる。また、事件に非協力的だった地区住民が、被差別部落から「犯人」が出たとなると急に協力的になったというのも、これがムラの犯罪なのだなと感じさせる(413頁)。弁護士を信じなくなっていた石川一雄が獄中で三鷹事件の竹内景助に会って説得されているんですね。この人、獄中の待遇改善運動なんてしていたんだ。さらに、無罪を申し立てるきっかけが右翼荻原佑介だったというのも興味深い。また、正田昭や永山則夫なんかとも獄中で出会っている*1。他にも、見沢知廉なんかとも出会っているようだがこの辺りの記載はない*2

狭山事件の真実 (岩波現代文庫)

狭山事件の真実 (岩波現代文庫)

*1:正田昭という人物は死刑制度を考えるうえでよく引き合いに出されてきた人なのだが最近はあまり言の葉にのぼることがない。

死刑囚の記録 (中公新書 (565))

死刑囚の記録 (中公新書 (565))

ある死刑囚との対話 (叢書死の文化)

ある死刑囚との対話 (叢書死の文化)

正田昭・黙想ノート

正田昭・黙想ノート

。そして、獄中で猛勉強してというのはまさに永山則夫の境遇とかさなるものがある。
無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/狭山事件

囚人狂時代 (新潮文庫)

囚人狂時代 (新潮文庫)