冤罪説から話を組み立てているのでちょっと議論がゆるいなと思うところもあるが、現在、狭山事件の概要を知るためにもっとも入手しやすい本はこれかな。警察の取り調べのずさんさがよく分かる。また、事件に非協力的だった地区住民が、被差別部落から「犯人」が出たとなると急に協力的になったというのも、これがムラの犯罪なのだなと感じさせる(413頁)。弁護士を信じなくなっていた石川一雄が獄中で三鷹事件の竹内景助に会って説得されているんですね。この人、獄中の待遇改善運動なんてしていたんだ。さらに、無罪を申し立てるきっかけが右翼荻原佑介だったというのも興味深い。また、正田昭や永山則夫なんかとも獄中で出会っている*1。他にも、見沢知廉なんかとも出会っているようだがこの辺りの記載はない*2。
- 作者: 鎌田慧
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/04/17
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
*1:正田昭という人物は死刑制度を考えるうえでよく引き合いに出されてきた人なのだが最近はあまり言の葉にのぼることがない。
*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/狭山事件、