制度としての基本権

 「基本権は個人を国家から守るだけでなく、それとともにある仕方で社会の下位システムとしての国家の存立を確固たるものとし、全体としてより効果的でより強力な影響力を持つコミュニケーション活動を可能にする国家的官僚制の環境世界を構造化するのである」(67)。「統合過程はコミュニケーションの一般化として捉えられる」(72)。自己表出の一般化を可能にする役割と、役割コンビネーションを維持する個人的な人格性。
 「分化したあらゆる社会はもはや集権的には十分に調整することができないほどに発展しているが、そのような社会は、社会的諸要請の結節点としての人格性に依拠せずにはすまない」」(88)。表出の一般化。その前提となる国家による「物理的暴力の使用についての決定の集権化」。
 「自由と尊厳という二つの概念は、人間が個体たる人格として自己呈示することに成功するための基本条件を示している」(93)。自由とは帰責の問題である。そして、自己呈示における成果である尊厳なくしては、人間は自らの人格性を利用することが出来ない。
 「国家と個人的人格性とは、コミュニケーションの一般化の異なった方向性を示している、つまり成程相互的に前提しあってはいるが完全な範囲にわたって作用を及ぼしあったり、保障しあったりすることはできない異なったシステム形成を示している」。基本権の機能は「相対的に自律的なコミュニケーション構造への分化の形成に関わっているのではなく、全体秩序を構成する分化を維持することに関わっている」(104頁)。
 「尊厳の問題は、整合的で確信をもった自己呈示の困難性という点にあり、またこのような課題に対する人間の自己責任という点にある。人間に帰属させることが可能な表出について、人間は自ら決断を下しうるのでなければならない。人間だけが人間とは何であるかを規定しうるからである」(107頁)。

 社会秩序の十分な程度の行為態度予期の相互補完性は、「コミュニケーションの一般化」が達成する。「態度の予期」、「地位の予期」、「目的の予期」、「メンバーとしての予期」。「国家は、自己呈示という一定の個人主義、長期的で整合的な人格としての一貫性を自分の振る舞いに与えうるだけの人間としての能力を前提としなければならないが、それと同様にまた、国家は、予期が一定程度一般化されていることをも計算にいれていなければならない」(156頁)。「基本権は、決定的な点において、政治システムの分化可能性の前提を現実化する社会諸過程との間に距離を、安定化させるものなのである」(157頁)。

制度としての基本権

制度としての基本権