Bob Dylan

 さて、昨日、今日とボブ・ディランを聞きに行ってきた。二日行くことにしたのは、前回、毎日セットリストが変わっていたからだ。実際、バックバンドのメンバーがいったい次にディランが何を始めるのかと見つめる緊張感にたまらないものがあり、二日ともチケットを購入しておかなかったことをとても後悔した。
 というわけで、今回は1日分のチケットを確保した後、やっぱりと翌日分のチケットも買ってしまった。実際に、ツアーが始まってみると、どうも二つのセットリストで回っているようで、前回のようなお楽しみは期待できないよう。一方、ポールたちと同様、前回に比べればなんかすごい話題になっていて、若い客層が増えていたように思えた。
 で、それはともかくディランである。初日はバンドの音もイマイチめりはりがなく、ディラン自身もイマイチ元気な感じがせず、やっぱり老けたんだなという感じが拭えず。前回は、キーボード主体でいくらかアコギを弾いたと記憶するが、今回は最初からヴォーカルのみでときおりピアノに向かい、ブルース・ハープもふく。バックバンドの演奏も控え目で、ディランのピアノを押し出したいとのかなと思う一方、そのピアノの迫力もそれほどというわけでもない。
 アンコールの最後に「風に吹かれて」をやったのだが、これがディランなら当たり前とはいえ、原曲を知っていてもそれと知るには、いささか時間がかかっていまうよアレンジで、しかも、途中でディランのピアノとバックバンドの演奏があわせられなくなった。これはミスなのかそれともそんなことは気にしないのか。いずれにせよ、こちらがそのハプニングを楽しんでしまえるのは、相手がディランだからだ。とはいえ、なんか消化不良な感じは拭えなかった。
 で、二日目である。ドアタマから完全に違う。まず、音がいい。これはPAの問題なのだろうか、それともバンド全体のノリの問題なのだろうか(両方な感じがする)。いずれにせよ、ディランの歌声も昨日と違ってずっと張りがあるように聞こえる。しかも、開演時間前から歌い始めて最初からのりのりである。あまりの違いに、最初は、昨日寝不足で草臥れていた私の耳が悪かったのかとも思ったが、どう考えても昨日よりいろんな意味でレベルがあがっている。
 今日なら、ディランがいまでもアクチュアルなミュージシャンなのだと強く実感し断言できる。いくつかの曲が前日と入れ換えられているが、それもまたノリがよく、とにかく昨日のディランと比べると断然の違いでそれがまた気持ちがよい。昨日はけっこうヴァイオリンを弾いたけど、今日はむしろバンジョーの方が多かった。最近の作品が多めで、ルーツ・ミュージック主体という感じ。
 バンドの演奏が控え目なのは、ディランのピアノを強調したいからなんだなというのが前日より明白にわかった。とくに、アンコールではチャーリー・セクストンはさらにギターのヴォリュームを絞り、ディランは「オール・アロング・ザ・ウォッチ・タワー」で昨日よりかなり長くピアノを弾いた。「風に吹かれて」でも昨日みたいなトラブルはなかった。
 ポールがもう一度やってくる。それ以上に、これだけのツアーができるディランは絶対にこれからもボクの前にあらわれてくれると信じている。

Things Have Changed
She Belongs To Me
Beyond Here Lies Nothin'
What Good Am I?
Waiting For You
Duquesne Whistle
Pay In Blood
Tangled Up In Blue
Love Sick
High Water (For Charley Patton)
Simple Twist Of Fate
Early Roman Kings
Forgetful Heart
Spirit On The Water
Scarlet Town
Soon After Midnight
Long And Wasted Years
All Along The Watchtower
Blowin' In The Wind