この本、どうすれば手に入るだろうと思っていたら、いつの間にか文庫化されており、しかもそれが絶版になっているのだが、お手軽に手に入った。資料的な制約もあるのかもしれないが、谷崎と対比しながら「哲学者/倫理学者」になる前の和辻の姿を追いかけていく話は面白い。当然、あの有名なエピソードも出て来る。和辻の親父は儒学好きだったんだな。仲人を入れない結婚に、堀部安兵衛の喩えをだしたと。谷崎も和辻も徴兵を前に神経衰弱になっているというのも、すごっくまっとうな感性として強調しておきたい。ちなみに、照さんというのは、いろんな意味で才色兼備の妻だったんだな。最後には阿部次郎との話もちょっとでてきます。照さんの本も読まないと。そして、和辻の照さんへの思い入れを考えると、倫理学の体系といささか齟齬が感じるな。
どうでもよいことだが、和辻は一時期、いまや存在しない父の実家の近くに住んでいる。もっとも、こっちは長屋で向こうは山の手にあたるのだが。「天国と地獄」?それから鵠沼か。和辻の墓は小津と同じあの寺にある。
- 作者: 勝部真長
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1995/04
- メディア: 文庫
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