絀川思想小史

 源了圓氏の著作はコンパクトだが中身も濃いな。これも絀川時代の思想史を概観するにはとても便利な本であり、和辻や丸山を意識して書かれていることもあきらかだ。ここでは出発点となる朱子学の評価を確認。いちいち辿ることはしていないが、このフレームワークをベースに以降の思想が展開していくとみることができるな。朱子学受容の影響は、上下の身分を基礎づけるイデオロギーとして理解された(それが以降どう展開するか)、②上下の差別や身分を先天的なものとして受け取る道徳、③武士の公的世界への責任感(この点では、やはり荻生徂徠)、④尊王論への影響(儒教はしばしば神学に連続し、古文辞学国学に接合する)、⑤朱子学の合理的性格、⑥朱子学自然法的役割。この本を読んでいくと、�川時代の思想展開が同時代からそれほど浮いたものではないと思えるようになってくる。

徳川思想小史 (中公新書 (312))

徳川思想小史 (中公新書 (312))

徳川合理思想の系譜 (中公叢書)

徳川合理思想の系譜 (中公叢書)