面白く読めた。これまで考えてもみなかったが、和辻のスタイルに吉本隆明に通じるものを感じたりもした。しかし、和辻倫理学との接点を見いだすのは難しいな。最後に、歌舞伎の論考が出てくるのだが、これが坂部本に使われていた論文だろうかと思ったが、坂部本を発掘できない(失礼、あれは「歌舞伎と操り浄瑠璃」だった)。しかし、さしあたり、この論考は歌舞伎批判ということになる。和辻は新劇運動にからんだりしていたんだっけ。「すべてそれらにおいて劇の葛藤を生み出す根拠は、常に社会の一時的な風習である(370頁)。「我々はもはや劇中の人物の「人格的行為」を見るに要しない」(371頁)。その一つ前、「沙門道元」でも「人格」ってことにはこだわっているんだよな。加藤周一の解説も流石彼ならでは*1。ただ、続編は全集に移行せねばならない。
- 作者: 和辻哲郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1992/11/16
- メディア: 文庫
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*1:ただ、序説というのは嫌みだよな。