部屋を片付けていたら、以前買ったまま読まずにいたこれが出てきたのでざーっと読んでみたのだが言葉につまる。吉本を知らない人がこの本を読んで、吉本がどんな思想家か分かるのだろうか。それに「品詞というのは、とてもおもしろい現象で、どの言語にも必ず品詞があります」とか書かれると困ってしまう。
個人的には、吉本隆明は思想家というよりも文芸批評家として面白く読んできた。『西行論』(大河ドラマではとんでもない扱いをされているようですが)*1とか、『源実朝』(太宰治「右大臣実朝」や小林秀雄「実朝」とあわせて読みましょう)*2とか、『マチウ書試論』*3などなど。
思想家としては苦手だったけど、今読み返したらどうなんだろう?まあ、「うっ、み」は無理だと思いますが。『共同幻想論』は読み通した記憶がなく*4、『言語にとって美とはなにか』は数行読んだところで放り出してしまった*5。ただ、「転向論」は説得力があると思ったし、なによりも「擬制の終焉」*6については、丸山よりも誰よりも、60年安保について的を得た評価を下していたと思う。しかし、新聞での逝去の取り上げ方は思いのほか小さかった*7。
- 作者: 橋爪大三郎
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2003/11/06
- メディア: 新書
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*7:ついでに、おじさんとしては、学生の頃、古本屋をのぞけば吉本の著作集やサルトル全集の断片が必ず転がっていたのが思い出されます。どこへ消えたのでしょう。そして、ばななが出てきたときは驚きました。