セラピーを範型とした人間関係

 あらためてギデンズの『親密性の変容』をひろい読みしてみたら、あまり面白くないな。出たときは新鮮な感じがしたんだけどなー。いま読むと、これってベラーがネガティヴに評価したことを肯定的に書き直したというか、それが現実だと開き直っただけの本のような気がする。たとえば、ベラーはこんな風に述べている。そして、これはテイラーなんかとよく似た話になっていくよね。

こうした矛盾を思うとき、心理学的な洗練は道徳的な貧困化と引き換えに得られたものではないかという疑いが生じる。セラピーの考える理想的人間とは、いっさいが明確な意識のもとに置かれ、いかなる場にある者も自分が何を感じているか、何を欲求しているかを知っているというものであるらしい。ここには「こうすべきである」や「こうしなければならない」が入りこむ余地がない(170頁)。

 

親密性の変容

親密性の変容

心の習慣―アメリカ個人主義のゆくえ

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