善と悪

 これはよい本だと思う。でも、大庭さんは新書を書くときぐらい、分量のことを考えても、N君のことにはあまりこだわらない方がよいと思うな。それよりは、後半の記述をもっと充実させて欲しかった。そして、それ以上に、ここでの話を全面展開した一書をものしてくれることを期待したい。

そうであるかぎり、濃密な評価語が表す徳性の認知に通底しているのは、悪の認識・悪の自覚である。ここから出発するならば、悪によってもたらされる苦悩、つまり悪しき行為・態度による苦しみを、これ以上生みださないようにすることが、まずもって善いことなのだ、ということである(170頁)。

 

善と悪―倫理学への招待 (岩波新書)

善と悪―倫理学への招待 (岩波新書)