Ce n'est qu'un debut

 『小さな哲学者たち』。幼稚園で「哲学」の授業をするというとちょっと大げさだが、みんなで議論をしていく時間が教育プログラムに組み込まれていて、それを追いかけていくドキュメンタリー。幼稚園の人種的多様性から、もしかしてと思ったらやっぱり特別教育地区での実験的試みの模様。とにかく、園児たちが自分たちの意見を述べ、それにparce queと続けて、自らの意見を正当化して、議論を組み立てていくようになる姿を見ていくと感心するしかない。
 たとえば、「知性intelligenceとは」と聞かれて、「パパはintelligentじゃない。チョコレートペーストを冷蔵庫に入れたから。ママはそんなことはしないからintelligenteだ」とか。ごもっとも。そんな感じで、しばしば議論にとりくむ態度や出てくる発言内容が生活に結びついていて、多分に親の影響を受けたものであることが見てとれるのも興味深い。なかには人種差別的な発言も出てきたりするのだが、先生もそれを頭ごなしに否定するようなことはなく、こちらもpourquoiと説明を求めては、理由がないわねとやっていく。そして、みんな「哲学」の授業が大好きみたい。エピソードの転換ごとにインサートされる映像もキレイだ。
 周囲にこの程度のarguementもできない大人があふれているなか、そうした園児たちの姿を見ていると複雑な気分になってしまう。だって、ほんとうにce n'est qu'un debutでしょ。