『カンパニー』

 トニー賞にあわせて、数年前に再演されてなんだか部門で賞を受けた作品がテレビで放送されていた。でも、これ、前に同じものが放映されていたような気がするんだけど(なんだかこの放送局、最近使い回しが多い)。もちろん、再映だってかまわないけれど、映画と違って舞台って繰り返されるものだから、その旨アナウンスされてもよかったような。
 
 それはともかく、ストーリーは、いってみれば「アラアフォー」男の話。35歳の誕生日を迎えた男が、友だちに囲まれた誕生パーティを前に、これからどうしたものかと思案する話で、「ハッピー・エンド」というか話のオチが分かり切っていた点をのぞけば面白かった。舞台も凝っていって目を惹かれた。
 
 結婚した友人夫婦たちは、結婚はろくなものじゃないみたいなことを言いながらも、結婚をすすめる。いろいろつきあった女もいるけど---。結局、結婚には踏み切れず、いまの暮らしを続けようかどうしようか。その一方で、自分を待っている女性がどこかにいて、自分はいつかその人を迎えに行くんだなんてありえない願望を抱いていたりもする。
 
 これって考えてみれば、一昔前なら20歳そこそこの女性が抱ていたとされるような悩みやためらいを、35歳の男に当てはめて描いているにすぎないわけで、それが笑えるというか、とてもリアルだったりする。でも、最後に一人暮らしに終止符を打って自分を変えようと決断して話が終わるのは、いかにもエンターテインメントだとも思ってしまった。
 
 成熟という視点を導入するとき、女性ならいまでも結婚・出産というのがある程度成熟の指標に使えるのにたいして(でも、いつまで?)、男の場合はそれがどこまで有効なのか、以前記したようにボクは疑問に思っている*1。もっとも、考えてみれば、主人公が昔の女を訪ねてまわり、でも、それで何かが分かるわけでもないという、『ブロークン・アローズ』や『ハイ・フィデリティ』のような映画作品も結婚へのふんぎりのつかなさを主題化しているのだといえなくもないか。
 ついでに、今日のN響アワーはすっごいパワフルなヴァイオリンでリゲティでしたよ。