『リンダリンダリンダ』

 映画公開時に見そびれていのだけれど、しばらく前に放映されたので、録画しておいた『リンダ・リンダ・リンダ』を見る。これがなかなか面白かった。最初に、とある女子高生が画面に映って、私たちの青春のなんたらとか学祭への抱負みたいなことが、ただし、少し醒めたトーンで、語られて、あらあらそんな調子でいくのかよと思ったら、それが学祭用のビデオ撮影だったことがわかる。しかも、そのあと「こんなのでいいの?」とかやっている。次のシーンでは、一人の女の子が廊下を歩きながら、友だちと話をしては一つ一つ教室を横切っていき、それを背景にイントロっぽい音楽が流れる。このシーンがとてもいい。で、次のシーンでは音楽がばーんと鳴って何か始まりそうな予感を持たせるのだが、これはみごとにすかされる。ある意味、この作品の特徴はこれの繰り返しだといってもいい。
 どうやら、女の子達がバンドを組んで学祭でライブをやることになってたらしいのだが、メンバーの一人が怪我をして、それをきっかけにオリジナル・メンバーの二人がケンカ別れしたらしい。で、かなり唐突に韓国人の留学生のソンちゃんを入れて新しいバンドで文化祭にでることになる。演奏するのはブルーハーツ。そのライブまでの顛末を描いた話。
 でも、決定的に盛り上がる瞬間というのはやってこない。メンバーの恋はといえば、それぞれ、元カレとは別れたような別れないような、コクられてもハングルで答えて中途半端に終わってしまい、好きな彼氏にやはり告白できないってな感じ。新しく入った韓国人のソンちゃんと一番親しげに話す瞬間には、彼女はハングルで話し、メンバーにはそれが分からない。前の晩学校に泊まり込んで練習をするのだが、なんかテンションがあがらない、そのあいだソンちゃんは誰もいない体育館のステージで一人で盛り上がっている。でも、徹夜のせいで当日リハの最中にみんな眠り込んでしまい(夢を見て)、会場に遅刻。おまけに雨のせいでずぶぬれ、裸足のライブ。はじめるとけっこうノリノリなのだが、カメラが切り返すと、ステージにはそんなに人が集まってるというわけでもないし、それだけ集まってきたのも雨のせいだ。ケンカした友だちとも仲直りをしたようなしないような。でも、メンバーはそれぞれ半径5メートルくらいでちょっとずつ輝いてる。それがいかにも現代的、それを固定したカメラがやさしくユーモラスにとらえている。

リンダリンダリンダ [DVD]

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