とりあえず三冊とおして読んでみた。スタイルとしては水俣フォーラムがやってることに似てますね。知らない知見もあり、そうした意味では興味深く読めた。いちばんぶっとんでるのはやはり石牟礼さんの「ヒロム兄やん」の話でしょう(第3集)。色川さんが『水俣の啓示』でこんな風にまとめているエピソードにも重なる話だ。
定着した被差別民には苛酷であった水俣の庶民も、こうした狂女や漂泊者には優しかったという所に、私などは常民の歴史の測りがたい深淵を見る(上巻60頁)。
- 作者: 色川大吉
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でも、気になったのは、いろんな方を呼んできて話を聞くのはいいけれど、それがどのように蓄積されていくのだろうかということだ。たとえば、現場に携わった様々な方々に話をうかがうにしても、招く側がもっとコンセプトをたて、インタビュアーもたてたりして、一定の主題のもとにいろんな方に話を伺っていくというようなアプローチだって可能なはず。うかがった話からどんなことが考えられるのか枠組みを考案したり、これまでをなされてきたことを検証していくような作業が講義のなかに組み込まれていくようになると、貴重な証言の意義がより深められていくんじゃないかと思うんだけど。既刊本のなかで、そうした視点をいちばん感じさせたのは津田敏秀さんの話かな。当然、これから試みられていくのだろうけれど、続けられていくのであれば、そうした視点がもっと見えてくるといいな。
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