ムンク展、サイレント・ダイアローグ

 上京二日目の午前はムンク展に行ってみることにした。東京で美術館へ行くと、とても見た気になれないほど人がわんさかいるのがしばしばなわけだが、日曜のわりには思ったほど混んではいなかった。まあ、たしかに『叫び』は来ないし、展示されている少なからずは装飾プロジェクトの習作だったりするから、代表作を集めたというわりにはもの足りなさを感じないでもない。ムンクが装飾したオスロ大学講堂やチョコレート工場の食堂が紹介されると、やっぱりその実物を見たくなるし。
 そうはいっても、白・赤・黒の女と一人の男を配した「生命のフリーズ」、あるいは月と湖に伸びる月影、そんなモチーフが様々な作品で反復されているのを見ていくのはとても楽しかった。たとえば、「生命のフリーズ」を構成する四つの形姿は繰り返し絵のなかに描き込まれてくるのだが、他にも男の顔を背に赤い蔦がからまっている家の絵があったりする。「生命のフリーズ」だと男と交わる局面で女が身にまとうのが赤。なぜか家にからまっている蔦も赤。そうすると、この家のなかでは何が行われているのだろう、と考えずにはいられなくなる。そしたら、あとから出てきた絵では、同じ構図で赤い蔦の代わりに、家の傍らで抱き合っている男女が立ってたりして、あ、さっきの妄想は当たってたみたい、とか。装飾プロジェクトの一枚、あの太陽は月と月影の延長にあるんだろうな、とか。もっとも、邸宅の子ども部屋の装飾を頼まれても、性を連想させるシーンを絵に描き込んでしまって突っ返されてしまったくらいのムンクだから、どうみたって、あの月と月影は女陰と男根にしか見えないよ。そうすると、あの太陽はdisseminationって感じだな。それなのに、グッズ・コーナーでは、月と月影を組み合わせたストラップなんかが売られていたよ。みんながこれをつけて歩くってのは凄いぞ(買いませんでした)。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibition/index.html#mainClm

 昼食後、時間が余ったから、さらにICCの『サイレント・ダイアローグ』へ行ってみた。知らなかったんだけど、植物って微弱な電気を発していて、その電位は人間が近づいたりすると変わる。その電気をひろって音を出したり、映像を作ったりするインスタレーション。一番面白かったのはキノコのインスタレーション。キノコの電気をひろって音にするのだが、近づくとびっくりしたように大きな音が鳴り、しかもキノコ毎に音が違う。四つのキノコをあっちへいったりこっちへいったりすると、ちょっとしたノイズ・ミュージックを聴いている(あるいはプレイしている)ような格好になる。これは楽しい。
http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2007/SilentDialogue/index_j.html