堀有喜衣編『フリーターに滞留する若者たち』(勁草書房2007)

 お仕事用に購入した本。発売から少しあいだがあいたが、JILの報告書をベースにした一連の本の続きとして、新たな知見を仕入れておこうと読了。気になった論点をいくつか簡単にピックアップしておくと、
 まず、高学歴者ほど正社員になりやすく、低学歴者ではなりにくいという傾向がさらに進んだ。この傾向は、離学・卒業直後から見られることであり、非典型雇用から正社員への移行はあまり進んでいない。また、本人の学歴は親の社会階層に規定されるところが大きいから、社会階層が本人の就業形態に影響を与えるところは大きい。他方、正社員の労働時間の長期化傾向により、正社員と非典型雇用のあいだの待遇格差は相対的には改善されている。
 一貫して非典型雇用のままの男性は、未婚で親と同居していることが多い。女性では、正社員志向と非典型雇用・結婚志向でキャリア志向が分化する傾向にあり、しかもそれが学歴に相関している。
 当然ながら、自分の生活やキャリアを肯定的に見る度合は正社員組の方が高いが、5年前と比べると、全体的に生活やキャリアを肯定的に見る度合が高まっている。また、「努力すれば将来を切り開ける」という意識を持つ若者はキャリアのいかんにかかわらず高い。
 フリーターについては、フリーター経験率の高まりが見られ、これは学歴および経済的な豊かさに相関する。さらに、フリーター期間の長期化傾向が見られるが、フリーター経験に対する評価はあまり変わらない。しかも、フリーターからの離脱行動を試みる割合は、男女の区別なしに、低下している。
 まとめれば、景気は改善したのかもしれないが、非典型雇用をとりまく環境はさほど改善されてはいない。だが、当事者の意識はといえば、非典型雇用をよりノーマルにみる傾向が強まっているということになる!?だから、「滞留」なわけですな。以前、Furlong & Cartmelの本に言及したが*1、ここに見出されるのは、あの主観的評価と「客観的評価」の違いの再現だと言っても良さそうだ。でも、世間の評価を反映してか、学生に話を聞くと、フリーターにたいするネガティブな視線というのはより強まっているように感じられる。このすれ違いはどうなっているのだろう?

フリーターに滞留する若者たち

フリーターに滞留する若者たち

ま、これの後続資料と言うことで

自由の代償/フリーター―現代若者の就業意識と行動

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