TATSUMI マンガに革命を起こした男

劇画家・辰巳ヨシヒロ(1935〜)、実はそれほど読んでいるわけではないのだけれど、劇画がそれまでの漫画とは違った線で、違ったストリーリを描いてきたぐらいのことは知っている。そして、今回、映画としてあらためて眼の当たりにした辰巳の目線はとてもクールだ。戦後70年のなかで辰巳が時代と距離をおきながらもともにしてきた世界をいまわれわれが目の当たりにするとき、それは私にとても複雑な感慨をいだかせずにおかない。しかも、これを映画化したのはシンガポールの監督だという。しかし、私はこれを日本映画だと思わずにはいられない。世界でこれだけの評価を受けながら、というのは実はどうでもよいことだが、これだけの表現を蓄積してきた作家を日本語圏で評価できないということはなんとも悲しい。世間を騒がせているどんなことよりも、辰巳の作品が日本語という境界を越えて受け入れられているということ事態が誇るべきことかもしれないというのに。
 

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