人間と空間

 読みこぼしたボルノーのこの本、退屈そうだと思っていたけれど、それほどでもなかった。ちょっと気になるフレーズを。
 「人間が自分のはるか外部に、遠方の土地にさがし求めるものは、人間そのものの内的な本質なのである(90頁)。たしかに、桃源郷とか天国なんかはそうしたイメージだろうし、実は自分はよその家の子ではないかと思ったりするのもそうなのかな。ユートピアとはどこにもない場所のことである。それから、これは夢、つまりは眠ることに通じるな。そして、われわは眠るときや闇にくるまれるとき、空間と身体の境界を、つまりは世界を消失させる。
 「自分の家を建設し、そしてあらゆる破壊のあとでもくりかえしあらたにそれを建設することが人間の課題であるなら、人間はその場合、世界と人生への究極的な信頼によって支えられていなければ、そのことをはなすことがまってくできないであろう」(132頁)。バシュラールを引きながら論じられているが、これは基礎的信頼にもつうじる話であるな。
 エリアーデを引きつつ「このような家屋建築は宇宙という範例にしたがってなされる」(137頁)。で、同じことは大規模な家屋である都市にもあてはまると。家のなかではかつてなら竃、いまなら寝台が中心になると。これらの各項はメタフォリカルな関係にあると言ってよいだろう。

人間と空間

人間と空間

さて、これもってたっけ。
空間の詩学 (ちくま学芸文庫)

空間の詩学 (ちくま学芸文庫)

これも文庫になってたんだな。
場所の現象学―没場所性を越えて (ちくま学芸文庫)

場所の現象学―没場所性を越えて (ちくま学芸文庫)